落葉樹盆栽の葉刈り(はがり)|小葉化と枝の細分化を促す夏の技法
落葉樹盆栽の葉刈りの時期・全葉刈りと部分葉刈りの違い・実施可否の見極めを解説し、小葉化と枝の細分化につなげる基本を紹介します。葉刈り(はがり)は、もみじや欅などの落葉樹盆栽で行われる、生育期の葉を切り取って二番芽を吹かせる技法です。単に葉を整理する作業ではなく、葉を小さくし、枝先を細かく分岐させて盆栽らしい繊細な…

この記事のポイント
落葉樹盆栽の葉刈りの時期・全葉刈りと部分葉刈りの違い・実施可否の見極めを解説し、小葉化と枝の細分化につなげる基本を紹介します。葉刈り(はがり)は、もみじや欅などの落葉樹盆栽で行われる、生育期の葉を切り取って二番芽を吹かせる技法です。単に葉を整理する作業ではなく、葉を小さくし、枝先を細かく分岐させて盆栽らしい繊細な…
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葉刈り(はがり)は、もみじや欅などの落葉樹盆栽で行われる、生育期の葉を切り取って二番芽を吹かせる技法です。単に葉を整理する作業ではなく、葉を小さくし、枝先を細かく分岐させて盆栽らしい繊細な樹形に近づけるための、落葉樹ならではの重要な管理技術です。
葉刈りとは何か
葉刈りとは、健全に育った葉を意図的に切り取り、その後に芽吹く二番芽(にばんめ、夏芽とも呼ばれます)を利用して、葉を小さく、枝分かれを細かくする技法です。落葉樹は一度葉を失っても休眠芽や潜芽から新たに芽を出す性質があり、この性質を利用して樹形を整えていきます。一番芽で伸びた葉は間延びしやすく葉も大きくなりがちですが、葉刈り後に出る二番芽は葉が小ぶりになりやすく、節間も詰まりやすいため、結果として枝先が細かく分岐した繊細な樹相に近づいていきます。
もみじ(イロハモミジ)や欅(ケヤキ)、ブナといった、二番芽の吹きがよい落葉樹の代表的な樹種で広く行われる技法です。特にもみじや欅は葉刈りとの相性がよいとされ、小品盆栽から大きめの樹まで、樹形を整える定番の手入れとして親しまれています。
実施の時期
葉刈りの適期は、新葉が硬くなり十分に展開した初夏から梅雨頃、おおむね5月下旬から6月にかけてです。この時期はまだ気温・日照ともに二番芽の展開に十分なだけの生育期間が残っており、切った後の芽吹きと充実に無理がありません。真夏の盛りや秋近くに行うと、芽吹いた新葉が十分に育たないまま生育期が終わってしまい、樹を弱らせる原因になるため避けます。
全葉刈りと部分葉刈りの違い
葉刈りには、樹全体の葉をすべて切り取る「全葉刈り」と、樹勢の強い部分や込み合った部分だけを選んで切る「部分葉刈り(または軽い葉刈り)」があります。全葉刈りは樹全体の芽吹きを揃え、樹形全体を均一に細かくしたいときに用いられますが、樹に大きな負担がかかるため、十分に樹勢が充実した健全な木でなければ行いません。
一方、部分葉刈りは、樹の一部だけが強く伸びて他の枝とのバランスが崩れているときや、樹全体の体力にまだ余裕が少ないときに、負担を抑えながら樹形を整える方法として選ばれます。初めて葉刈りに取り組む場合や、樹勢に不安がある場合は、まず部分葉刈りから試すのが無難です。
実施の可否を見極める
葉刈りは落葉樹であればどの木にも行ってよい作業ではありません。もっとも重要なのは、対象の木が十分な樹勢を持っているかどうかです。植え替え直後で根がまだ活着していない木、葉が小さく黄ばむなど樹勢が弱っている木、その年に大きな剪定や強い針金かけを行った木などは、葉刈りによってさらに体力を消耗し、枯れ込みにつながる恐れがあるため避けます。
また、葉刈りはあくまで落葉樹に対する技法であり、黒松や五葉松、真柏といった松柏類には行いません。松柏類の葉刈りに相当する管理は、芽摘み(ミドリ摘み)や葉すぐりなど別の技法で行われ、落葉樹の葉刈りとは目的も手順も異なります。樹種の性質に応じた技法を選ぶことが前提になります。
葉刈り後の管理
葉刈り直後の木は葉を失った状態のため、直射日光の強すぎる場所は避け、やや日陰がかった風通しのよい場所で二番芽の芽吹きを待つのが基本です。芽吹きが確認できたら、徐々に通常の日照管理に戻していきます。水やりは通常どおり用土の乾き具合を見ながら行いますが、葉が少ない分だけ蒸散量が減るため、過湿にならないよう用土の状態をよく観察します。肥料は樹勢の回復を優先し、二番芽がある程度充実するまでは控えめにするのが基本的な考え方です。
年間の手入れの中での位置づけ
葉刈りは単独の作業ではなく、盆栽の年間管理サイクルの中に組み込んで考えると効果的です。春先の芽出し直後に伸びすぎた新梢を軽く整理し、そこから伸びた一番芽の葉が硬く安定した初夏のタイミングで葉刈りを行い、その後に出た二番芽で秋までに樹形を充実させる、という流れが基本になります。葉刈りの時期が遅れて二番芽の充実期間が短くなると、秋の紅葉の色づきにも影響することがあるため、適期を守ることは樹形づくりと紅葉の両面で意味を持ちます。使用するはさみは切れ味のよいものを用意し、複数の木を続けて作業する場合は、病気の伝播を防ぐ意味でも刃を清潔に保つよう心がけます。
樹種による反応の違い
同じ葉刈りでも、樹種によって二番芽の吹き方や葉の小さくなり方には差があります。もみじは比較的芽吹きが安定しており、全葉刈り・部分葉刈りのどちらにも対応しやすい樹種として知られます。欅は枝先が細かく分岐しやすい性質があり、葉刈りを重ねることで小枝の密度を高めやすい一方、樹勢の見極めをより慎重に行う必要があります。ブナは他の樹種に比べて芽吹きがやや穏やかな傾向があるため、いきなり全葉刈りを行うのではなく、まずは部分葉刈りで様子を見ながら段階的に取り入れるとよいでしょう。
まとめ
葉刈りは、もみじ・欅・ブナといった二番芽の吹きがよい落葉樹盆栽で、小葉化と枝の細分化を進めるための夏の代表的な技法です。実施できるのは樹勢が十分に充実した木に限られ、全葉刈りか部分葉刈りかは樹の状態に応じて見極める必要があります。適期と樹の状態を守って行うことで、翌年以降の樹形づくりに大きく役立つ技術です。
