洋蘭交配種の名前はどう決まる? RHS国際登録制度のしくみ
洋蘭の交配種grexの名前は英国王立園芸協会RHSが国際登録機関として一元管理。grex名と品種名の違い、Sanders Listの歴史、登録の流れを解説します。一般的に流通している洋蘭のラベルには、「〇〇 × △△」のような交配名や、「’〇〇’」という品種名が記されていることがあります。実はこの名前、育種家が自…

この記事のポイント
洋蘭の交配種grexの名前は英国王立園芸協会RHSが国際登録機関として一元管理。grex名と品種名の違い、Sanders Listの歴史、登録の流れを解説します。一般的に流通している洋蘭のラベルには、「〇〇 × △△」のような交配名や、「’〇〇’」という品種名が記されていることがあります。実はこの名前、育種家が自…
関連品種
一般的に流通している洋蘭のラベルには、「〇〇 × △△」のような交配名や、「’〇〇’」という品種名が記されていることがあります。実はこの名前、育種家が自由に名乗っているわけではなく、英国王立園芸協会(Royal Horticultural Society、RHS)が国際的な登録機関として一元管理する仕組みの上に成り立っています。RHSは洋蘭交配種に関する国際栽培品種登録機関(International Cultivar Registration Authority、ICRA)としての役割を担っており、世界中で作出される新しい交配の名前を記録し続けています。今回は、洋蘭を購入したり調べたりする際に目にする「grex名」と「品種名」がどのように決まり、登録されているのかを整理してみます。
grex名とは何か——集合名としての交配名
洋蘭の交配種の名前を理解するうえでまず押さえておきたいのが「grex(グレックス)」という考え方です。grexとは、同じ両親同士を交配して生まれた実生(種子から育った子孫)全体に与えられる集合的な名称のことを指します。例えばカトレアの交配で新しいgrex名がつけられた場合、その交配から生まれた株はすべて同じgrex名を共有することになります。つまりgrex名は個体そのものを指すのではなく、「その交配という血統・組み合わせ」を指す言葉だと考えるとわかりやすいでしょう。
一方で、そのgrexの中から特に花形や色、大きさなどが優れた個体を選抜し、株分けやメリクロン増殖によって同一クローンとして流通させる場合には、個体を特定するための「品種名(クローン名)」が別途つけられます。品種名は国際的な慣習として単一引用符で囲んで表記され、grex名の後ろに続けて書くのが一般的なルールです。grex名は交配という「設計図」を、品種名はその中から選ばれた「個体」を指すものとして区別して覚えておくと、洋蘭のラベル表記が理解しやすくなります。
Sander's Listから現在のRHS登録へ
洋蘭交配種の登録という営みには、実は長い歴史の積み重ねがあります。もともとは英国の園芸関連会社であったサンダース社(Sander's)が、世界各地で作出される洋蘭交配種の記録を集めて整理した「Sander's List of Orchid Hybrids」という名簿を編纂していました。この名簿は1946年に初版が刊行されたとされており、その後も洋蘭交配種の登録先として広く参照される存在であり続けました。
そして1961年以降、RHSがこの登録業務を正式に引き継ぎ、現在に至るまで洋蘭交配種の名称登録を継続して管理しています。現在はオンラインデータベース「International Orchid Register」として公開されており、世界中の育種家が登録してきた膨大な交配の記録を検索できるようになっています。ただし、登録の詳細な経緯や年代、当時の収録範囲といった細かい点については、このコラムでの要約だけでは網羅しきれない部分もあるため、正確な情報を確認したい場合はRHS公式のInternational Orchid Registerを直接参照することをおすすめします。
誰が、どうやって登録するのか
新しい洋蘭の交配を行った育種家は、その交配に名前をつけてRHSに登録申請を行うのが一般的な流れです。具体的には、RHSが提供するオンラインの登録システム(International Orchid Register)を通じて、交配の両親(花粉親と種子親)の情報と、希望する新しいgrex名を提出します。
申請された名前は、既に登録されている交配種の名称と重複していないか、また命名規約に沿った表記になっているかどうかが確認されたうえで、問題がなければ公式データベースに正式に追加される、という流れになっています。この仕組みがあることで、世界中で同じ交配に対して異なる名前が乱立したり、逆にまったく異なる交配に同じ名前がつけられて混同が生じたりすることを防いでいます。パフィオペディルムやシンビジウムのように育種が活発な属では日々新しい交配が申請されており、International Orchid Registerは今も継続的に更新されています。
登録制度を知ることでラベルの見え方が変わる
こうした登録制度の存在を知っておくと、ラベルに書かれた洋蘭の名前の読み方が少し変わってきます。grex名はその株がどの交配に由来するかを示す情報であり、単一引用符つきの品種名が併記されている場合は、そのgrexの中でも特に選抜された系統であることを意味します。胡蝶蘭(ファレノプシス)のように非常に広く流通している属であっても、交配の系譜をたどっていけば、こうした国際的な登録の積み重ねの上に今の品種が存在していることが見えてきます。
洋蘭を選ぶときにラベルの名前をじっくり眺めてみると、その一鉢が世界中の育種家たちによる交配と登録の歴史の延長線上にあることを感じられるかもしれません。botachokuでは全国の生産者が育てた洋蘭をオンラインで直接購入でき、こうした交配や命名の背景についても、今後もコラムで紹介していく予定です。



